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衝撃の作品
いつか紹介しようと思っていたのに、なんて書いたらいいのか分からなかった、衝撃の作品を再読しました。ウェザーの気ままなHPの美野楚名さんが書かれた『血が・流れて・溶ける・海へ』。これ実は、ネット小説で最高の作品だと思ってるんですね。
原爆の話なんだけど、とにかく構成と技法がうまい。原爆投下時の時代と現代が入れ替わりに描かれていて、さらに、語り手が確定されてない。視点が移るたびに、時間と空間が歪んでいく感じがするんですよ。最終的には、原爆の被害にあわれたすべての人々の痛みと物語が、時間と空間に流されて、読み手のもとに届けられるような仕組みになってると思うんです。
そんなことを頭の片隅で分析しながらも、実際に読んでいるときは、泣きながらぷるぷる震えてページをめくってます。わたしにとっては『はだしのゲン』よりも衝撃は大きい。この作品は、原爆を過去の他人事の話にしないで、読者を作品の一部にしてしまうんですよ。
無粋なことを言ってしまいますが、最初、語り手が見えないので不安定な感じがすると思います。それが作品の肝なので、気にしないでください、…人様の作品に、勝手に解説をつけてるようで恥ずかしいですね。でも、誰かに、ひとりでも多くの人に、読んで欲しいと思ってます。
リチャード・パワーズ『われらが歌う時』
- われらが歌う時
- リチャード・パワーズ (著)
- 新潮社 (2008/7/30)
子供のころから様々な本を読んできて、たまに”わたしの理想の小説”とはどんなものかを考えることがありました。それは『ライ麦畑でつかまえて』の延長にあったり、『魔の山』だったり、『はてしない物語』のようであったりします。この作品『われらが歌う時』は、わたしの理想に近く、想像を超えた小説かもしれません。
舞台は20世紀アメリカ。亡命ユダヤ人の物理学者と黒人音楽学生が奇跡的な恋に落ち、白と黒の混血の子供たちが生まれた。激しい人種差別のなか、この家にはいつも音楽が満ちていた。時間の秘密に包まれていた。やがて家族は崩壊し、世界に暴力と音楽が広がっていく。そして過去と未来の時は加速し、現在に到達する。
パワーズに関する書評や記事には、よく「共鳴」という言葉が使われています。わたしはこの作品を読んでいる時、嘘っぽいけど、あたまのなかに小さな空間ができて、どんどん広がっていく気分を感じました。まったく小説の力は無限ですね。
山田 詠美『風味絶佳』
- 風味絶佳
- 山田 詠美 (著)
- 文藝春秋 (2008/05)
デビュー20年目のマイルストーン的作品集と紹介されていました。確かに、ひとつの到達点に達したような素晴らしい短篇集でした。作者の書くものは、経験に基づく感覚が大きい感じがしてて、あまり自分の好きなタイプの小説ではないです。エッセイとかは大好きなのですが。
でも、この作品は、現時点での芸が極まったというか、風格さえただよっているようで、好き嫌い関係なく、素晴らしいと思いました。
柴崎 友香『その街の今は』
- その街の今は
- 柴崎 友香(著)
- 新潮社 (2009/4/25)
小説というよりも、芸術品っぽかった。大阪の街の風景とそこで生活する人々が描かれています。それだけです。評価の高い作品ですが、良さがよくわからない。なんて言ったらいいのかわからない。でも、大切にしなきゃいけない本だと思いました。
川上弘美の解説は、すばらしかったです。こういう解説しづらい小説に対して、技巧などのうんちくからアプローチせずに、まっすぐ感想を書いてます。えらすぎる。


