ミステリ・ホラー, レビュー
熱病 [ホラー・幻想 短編 完結]
小田牧央著 / 掲載サイト: *the long fish*
五感が狂いそうな異色の作品
麓から祭囃子の音が聞こえる。人々の賑わう方向へ進んでいく。どことなく寒気がして、身体が熱っぽい。そして踊りの輪にいた狐の面を被った青年が語り始める。──「熱病の、話をしようか。」 (あらすじ juni)
本格推理小説を多数書かれている作者の、あえて毛色の違うこの作品を紹介します。感覚と論理が対立しているようで融けあっているような異色の作品。
ストーリーは説明できません。語り手が誰で、いったい誰の話をしていて、いつの物語で、空想なのか記憶なのか、なにがなんだか分からない。すべてが流れるように変化していき、その曖昧さが凄くうまい。そしてこの感覚が素晴らしく気持ち悪い。五感が狂う感じです。とくに序盤の、主語のない美しい短文の積み重ねには、胃がむずむずしました。
感覚的のようですが、計算された緻密な論理で作られているのだなと思います。推理小説好きな作者の、一種の叙述トリックであるのかもしれません。
ミステリ・ホラー, レビュー
HTML殺人事件 [ミステリー 長編 完結]
ame*著 / 掲載サイト: デンパンブックス内
硬派な社会派ミステリー
詩の投稿サイトから始まった些細な疑問。それはあるオンライン詩人の自殺に繋がった。詩人の自殺は、幾つもの殺人に──。ディスプレイからは表層しか見えない事件を追いかけ、ルネはウェブの奥深くを探る。(あらすじ juni)
リアリティがありすぎて恐ろしい気もする、インターネットを舞台としたミステリー。ジュニは、社会派ミステリーという印象を受けました。
主人公ルネは、インターネット関連の調査を請け負うフリーの仕事人。一日の大半をモニターの前で過ごしているルネが、常連の投稿サイトから疑問を抱き、地下組織の存在に気づいていくというストーリー。
主人公は静的で、”個”を感じさせない人物。組織の悪を暴いてやるという熱いタイプではなく、”見る・知る”ことに重きを置いている感じで、ジュニは自分が主人公になってウェブを巡っている気分になりました。
ミステリ・ホラー, レビュー
碧乃さんの冥探偵日誌 [オカルト・コメディ シリーズ 連載中]
藍川せぴあ著 / 掲載サイト: サクラボシ
ほのぼのオカルトコメディ
芹川碧乃のアルバイト先は、しがない探偵事務所。しかし他では扱わないような変わった依頼も受けている。オカルト・ホラー大好きっ子の碧乃と、イマイチ頼りない先生こと高橋探偵が綴る、探偵日誌!(あらすじ juni)
親しみやすい作品で、一ページ目から好印象を持ちました。変わった作風ではないのですが、優しさ・温かさ・可愛らしさを感じる、ほのぼのオカルトコメディです。
探偵事務所に舞い込んでくるオカルト関連の依頼を、主人公碧乃と先生こと高橋探偵がドタバタしながら解決していくというストーリー展開。オカルトよりもコメディ寄りです。
碧乃の一人称で書かれていますが、彼女の語り口が凄くいい。普通ながらも自然体でどこかトボケていて。章が進行するにつれ、笑いが冴えてきているのも楽しい。
読みやすく、読後感の気持ちいい作品です。
ミステリ・ホラー, レビュー
かくれんぼ [ホラー 長編 完結]
翔ぶ犬著 / 掲載サイト: 翔び
正統派ホラー小説
──かくれんぼしましょ──。携帯が受信した一通のメールが、美佳の忌まわしい記憶を揺さぶる。忘れていた田舎の景色。そして、子供のころの悪夢のゲーム。今、あの”鬼”がわたしを探している!?(あらすじ juni)
日本的正統派ホラー小説。じわじわ近づいてくる”鬼”の気配が、不気味で怖い。
都会で働くOLの美佳が、”かくれんぼの鬼”から届く不気味なメールの謎を解くために田舎へ帰省し、子供のころの記憶をもとに謎を解明する、というストーリー。
田舎の描写がとても印象的で、ひなびたバス停や水車の様子が目に浮かぶように懐かしく感じられ、また、そういう描写から恐怖感を演出しているところがうまいなと思います。
心霊関係の怖いモノは苦手なのですが、この作品は安心して(ホラーで安心というのも変ですが)恐怖を楽しめました。