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ドン・ウィンズロウ『犬の力』
- 犬の力
- ドン・ウィンズロウ(著)
- 角川書店(2009/8/25)
この作品は、ドン・ウィンズロウの別の一面なのかもしれません。今までのセンチメタルで優雅な雰囲気が隠れてしまっています。眉をしかめて、歯を食いしばって読むような、きびしい話でした。
冷戦時代からの30年間に及ぶ、中央アメリカを中心とした麻薬戦争を描いた物語。史実をベースに物語要素をふくらませた感じだと思います。アメリカの捜査官やメキシコの麻薬カルテル一家など、様々な立場の人々が描かれていますが、ほぼ皆幸せにならない。誰もが裏切りと騙し合いで、自分も周りもズタボロにしていきます。…犬の力で。(犬の力って解説を読んでも理解できないです)
読み始めは一昔前のスパイ小説みたいでとまどっていたのですが、途中からやめられなくなりました。怒涛の迫力に巻き込まれてしまいました。
ロバート・チャールズ ウィルスン『時間封鎖』
- 時間封鎖
- ロバート・チャールズ ウィルスン(著)
- 東京創元社 (2008/10)
タイトルと表紙の雰囲気で、コテコテのハードSFだと思い込んでたのですが、ぜんぜん違っていました。一般小説に近い感じです。時間が封鎖された地球。その終末世界での、幼馴染三人の友情あり恋愛ありの成長物語のようでした。すらすら読めて、単純におもしろかったです。ただ、時間が封鎖された理由が、なんだか安易というか、納得いかないです。それ以外がおもしろかったので、その辺はどーでもいいんですが。
リチャード・パワーズ『われらが歌う時』
- われらが歌う時
- リチャード・パワーズ (著)
- 新潮社 (2008/7/30)
子供のころから様々な本を読んできて、たまに”わたしの理想の小説”とはどんなものかを考えることがありました。それは『ライ麦畑でつかまえて』の延長にあったり、『魔の山』だったり、『はてしない物語』のようであったりします。この作品『われらが歌う時』は、わたしの理想に近く、想像を超えた小説かもしれません。
舞台は20世紀アメリカ。亡命ユダヤ人の物理学者と黒人音楽学生が奇跡的な恋に落ち、白と黒の混血の子供たちが生まれた。激しい人種差別のなか、この家にはいつも音楽が満ちていた。時間の秘密に包まれていた。やがて家族は崩壊し、世界に暴力と音楽が広がっていく。そして過去と未来の時は加速し、現在に到達する。
パワーズに関する書評や記事には、よく「共鳴」という言葉が使われています。わたしはこの作品を読んでいる時、嘘っぽいけど、あたまのなかに小さな空間ができて、どんどん広がっていく気分を感じました。まったく小説の力は無限ですね。
小川 一水『復活の地』
- 復活の地
- 小川 一水 (著)
- 早川書房 (2004/6/10)
SFファンタジーな世界での災害もの、大地震です。全3巻。作者の作品は読んだことがなかったのですが、秋頃から早川書房で大長編が発売されると聞いて、予習的に読みました。けっこうたくさん作品があって、どれを読んでいいのかわからなくて、適当に災害もの。
発展途上のレンカ帝国は、今の日本と似たような社会。実権を持たない皇統があって、政治家、官僚、警察などがいて。違うのは、星間列強諸国がいて外交が必要なこと。そのレンカ帝国の帝都で、未曾有の大地震が発生します。
パニックではなく、災害にどう立ち向かうかを描いた作品でした。青臭い理想論が気にならなくもないけど、なじめそうな感じで。ひさしぶりの大長編作家なので、他の作品も読んで慣れていくつもりです。
山田 詠美『風味絶佳』
- 風味絶佳
- 山田 詠美 (著)
- 文藝春秋 (2008/05)
デビュー20年目のマイルストーン的作品集と紹介されていました。確かに、ひとつの到達点に達したような素晴らしい短篇集でした。作者の書くものは、経験に基づく感覚が大きい感じがしてて、あまり自分の好きなタイプの小説ではないです。エッセイとかは大好きなのですが。
でも、この作品は、現時点での芸が極まったというか、風格さえただよっているようで、好き嫌い関係なく、素晴らしいと思いました。




