»本
栗本 薫『レダ』
- レダ
- 栗本 薫(著)
- 早川書房 (2010/1/10)
栗本薫の初期傑作SF『レダ』が復刊したので、お祝いに再読しました。はじめて読んだのは小学生の頃で、とても衝撃をうけた作品でした。作者の膨大な作品群のなかで、最も完成された作品だと、個人的に思っています。
「自分は誰なんだろう」という問いは(…言葉にすると恥ずかしすぎる)、常に作者の作品のメインテーマになっていて、『グイン・サーガ』や『魔界水滸伝』も、そこらへんは同じなんですよね。『レダ』はそのテーマを、鋭く、センシティブに描いています。
完璧に管理された社会。友達やパートナーは制度化され、独りでいることも自由、社会に反抗することも自由。誰もが幸せであることを追求した理想社会が存在した。でもイブ少年は、不幸なレダに出会ってから、社会に自分に疑問をいだきはじめる。
この作品は、いつまでも読み続けられる一冊になって欲しいです。
ロバート・チャールズ・ウィルスン『無限記憶』
- 無限記憶
- ロバート・チャールズ・ウィルスン(著)
- 東京創元社 (2009/7/30)
『時間封鎖』の続編だそうです。続きがあるとは知らなかったけど、三部作のようです。前作は時間が封鎖された地球で仮定体の謎に迫るという内容で、続編では地球と地続きとなった新大陸で仮定体との接触を試みることになります。前作と同じく人間ドラマ中心で、淡々としてる気がしました。別に嫌いじゃないんだけど、特徴がないっていうか、記憶に残らない作品なのです。
宮木 あや子『花宵道中』
- 花宵道中
- 宮木 あや子(著)
- 新潮社 (2009/8/28)
今年文庫化されたR18大賞作品。読者の性別関係なしに評判がいいみたいで。いわゆる本読みの人たちにうけいれられる感じの官能なのでしょうね。江戸の吉原を舞台とした遊女たちの恋物語。
R18という記号から想像していた作品とは、まったく違っていました。もっとえろえろな作品だと思ってたんです。作品全体に上品な官能的雰囲気がただよっていて、遊女ひとりひとりの事情、気性、感情、なども読み応えがありました。
とてもよい小説だと思いますけど、R18っぽくないんですよね。この作品は好きです、でも正直いって、もっとお下劣なものが読みたかったです。
角田 光代『トリップ』
- トリップ
- 角田 光代(著)
- 光文社 (2007/2/8)
タイトルの『トリップ』は、麻薬の幻覚症状だったり、日常の妄想だったり、旅だったりします。とある町に暮らす人々の、小さなトリップ話を集めた連作集。怖い話じゃないはずなのに、めちゃくちゃ怖かった。近所の肉屋で毎日コロッケを揚げている中年女性の記憶や、旅に出たきりお世話になった祖母のお葬式にも帰ってこない娘の心理とか、見たくないものを見てしまった気分です。
ドン・ウィンズロウ『犬の力』
- 犬の力
- ドン・ウィンズロウ(著)
- 角川書店(2009/8/25)
この作品は、ドン・ウィンズロウの別の一面なのかもしれません。今までのセンチメタルで優雅な雰囲気が隠れてしまっています。眉をしかめて、歯を食いしばって読むような、きびしい話でした。
冷戦時代からの30年間に及ぶ、中央アメリカを中心とした麻薬戦争を描いた物語。史実をベースに物語要素をふくらませた感じだと思います。アメリカの捜査官やメキシコの麻薬カルテル一家など、様々な立場の人々が描かれていますが、ほぼ皆幸せにならない。誰もが裏切りと騙し合いで、自分も周りもズタボロにしていきます。…犬の力で。(犬の力って解説を読んでも理解できないです)
読み始めは一昔前のスパイ小説みたいでとまどっていたのですが、途中からやめられなくなりました。怒涛の迫力に巻き込まれてしまいました。




